不動産・保険・建築・士業…各業界の視点で読む、相続のリアルとビジネスの可能性
相続実務コラム

保険営業が相続ニーズを掘り起こす3つの切り口

相続と保険。この2つのテーマは、実は非常に密接に関係しています。
にもかかわらず、「相続の話は税理士や弁護士の領域」と思い込み、保険営業の現場で取り扱わないまま終わっているケースが数多くあります。
しかし、相続の相談に応じられる体制があれば、保険提案の幅は一気に広がります。
今回は、保険営業として相続ニーズを掘り起こすための「3つの切り口」を紹介します。


① 納税資金の確保としての保険活用

まず最も分かりやすいのが、「相続税の納税資金」をどう準備するか、という切り口です。
相続税は原則として現金一括納付が求められ、納税期限は相続開始から10ヶ月以内。
相続財産の多くが不動産や自社株といった“現金化しづらい資産”で構成されている場合、納税資金の確保は重要なテーマになります。

このとき活用されるのが、生命保険の非課税枠です。
「500万円 × 法定相続人の数」までは非課税で遺せる仕組みがあり、現金が必要になるタイミングで確実に渡せるのが大きなメリット。
「相続税対策として、現金をどう遺すか」という話題は、保険営業が自然に入り込めるテーマです。


② 争族対策としての“分けやすさ”

次に、「財産をどう分けるか」という観点からの切り口です。
たとえば、長男が親と同居している実家を相続する場合、他の兄弟が「現金での取り分がない」と感じると、トラブルに発展することがあります。
このとき、生命保険を使って“現金で分けやすい財産”をあらかじめ用意しておけば、遺産分割協議の場を穏便に進めることができます。

保険金は受取人固有の財産となるため、遺産分割の対象になりません。
あらかじめ誰にどの程度の金額を渡すかを設計しておけば、感情的な対立を避けやすくなります。
これは、将来の争いを未然に防ぐための提案として非常に有効です。


③ 次世代の生活保障・事業承継対策

そして3つ目は、相続“後”の世界を見据えた切り口です。
たとえば、配偶者が相続後にひとり残される場合、その生活資金をどのように確保するか。
また、自営業者やオーナー経営者であれば、会社の株式や債務保証の引き継ぎも重要なテーマになります。

こうした将来不安に対しても、生命保険で備えることができます。
「もしも」に備えた資金計画は、相続というテーマを起点にしたときに、より具体性をもって受け入れてもらえるのです。


相続の話をすることは、保険を売ることではありません。
むしろ、相続の課題を丁寧に整理するからこそ、「保険が必要になる場面」が明確になっていきます。
営業の入口に“相続”というフィルターをかけてみると、新たな提案の扉が開くはずです。

【コラム著者のご紹介】

岡山生まれ。26歳で生損保の保険代理店「デザインライフ」を設立し、その後相続に関することで悩み苦しむ人を救うべく2015年から相続コンサルタント事業開始。 現在は、年間約500件の相続相談に対応し、遺言・信託などの法律文書の組成、税申告・登記などの相続手続きをはじめ、保険・不動産・建築など、資産に関わる問題の解決、見直し、活用、運用など、幅広くアドバイスと対策支援を行い、部分的解決ではなく総合的解決へと導く、相続・事業承継に特化したコンサルタントとして活動。年間10億円以上の資産を動かす相続・事業承継対策に携わる。 年間100回程度のセミナー講演を行っており、一般向け相続セミナーのほか、相続コンサルタント養成講座を開講。全国の相続に関わる専門家の教育に携わっている。 この他、日本赤十字社、大和リビング、メットライフ生命、オリックス生命、損保ジャパンひまわり生命等、講演実績多数。実績が評価され2024年には新築戸建賃貸投資に関する全国フランチャイズの研修講師として事業参画。2025年には自身が行う相続コンサル事業をフランチャイズ化。 FC本部として自社だけでなく全国の加盟店に所属する相続コンサルタントを育成し、並走して実務支援することで全国の相続相談に対応している。 趣味は、家族旅行とフットサル。2007年に自身が発足した岡山県リーグ所属フットサルチームのスポンサーとして支援している。 (成績:県リーグ優勝数回、岡山県選手権予選優勝1回)

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