不動産・保険・建築・士業…各業界の視点で読む、相続のリアルとビジネスの可能性
相続実務コラム

不動産会社が見逃しがちな「相続案件」の入り口とは

不動産業において、相続は「気づいたときには終わっていた」ということが少なくありません。
本来なら、自社に持ち込まれるはずだった売却や賃貸の相談が、知らないうちに他社で進んでいる。
その原因の多くは、「相続の相談段階で関与できていなかった」ことにあります。

たとえば、親が亡くなり、実家を相続した子ども世代。
彼らは不動産の知識も少なく、相続税がかかるのか、売るべきか、貸せるのかも分かっていない状態で、まずは誰かに相談しようとします。
しかしそのとき、不動産会社の窓口に「相続のことも聞ける」というイメージがなければ、話は別の専門家や知人に流れていきます。

その結果、税理士や司法書士経由で別の不動産会社に紹介されるケースもあれば、行政の窓口や銀行で紹介を受けて、そのまま話が進んでしまうこともあるのです。

これは非常にもったいない話です。
相続が発生したあとの不動産は、売却・賃貸・管理・活用・分筆・測量など、多くの業務機会につながっています。
にもかかわらず、「相続」の話を受け止める準備がないだけで、数百万円単位の仲介手数料や工事案件を逃してしまっているのです。

では、どうすればいいのか。
大切なのは、「相続の入口」に立つことです。
遺言があるかどうか、相続人は誰か、話し合いが進んでいるのか――。
こうした基本的なことをヒアリングし、「この先、何を決めていく必要があるのか」を整理する力が求められます。

もちろん、専門的な税務や登記手続きまで自社でやる必要はありません。
そこは士業と連携すればいい。
でも、不動産に関係する話が含まれているかどうかは、最初のヒアリングで分かります。
だからこそ、不動産業の立場で「相続の相談に対応できる」体制を持っておくことが重要です。

相談の入口に立てれば、その後の提案も自然と進みます。
遺産分割の方向性によっては、換価分割が必要になるかもしれない。
老朽化した空き家であれば、売却前にリフォームが必要かもしれない。
いずれにせよ、最初に相談された不動産会社が、その後の提案機会を独占できるのです。

「相続が終わってから連絡を待つ」のではなく、
「相続が始まったときに、まず声をかけてもらえる存在」になること。
それが、不動産会社として相続案件を取りこぼさないための第一歩です。

【コラム著者のご紹介】

岡山生まれ。26歳で生損保の保険代理店「デザインライフ」を設立し、その後相続に関することで悩み苦しむ人を救うべく2015年から相続コンサルタント事業開始。 現在は、年間約500件の相続相談に対応し、遺言・信託などの法律文書の組成、税申告・登記などの相続手続きをはじめ、保険・不動産・建築など、資産に関わる問題の解決、見直し、活用、運用など、幅広くアドバイスと対策支援を行い、部分的解決ではなく総合的解決へと導く、相続・事業承継に特化したコンサルタントとして活動。年間10億円以上の資産を動かす相続・事業承継対策に携わる。 年間100回程度のセミナー講演を行っており、一般向け相続セミナーのほか、相続コンサルタント養成講座を開講。全国の相続に関わる専門家の教育に携わっている。 この他、日本赤十字社、大和リビング、メットライフ生命、オリックス生命、損保ジャパンひまわり生命等、講演実績多数。実績が評価され2024年には新築戸建賃貸投資に関する全国フランチャイズの研修講師として事業参画。2025年には自身が行う相続コンサル事業をフランチャイズ化。 FC本部として自社だけでなく全国の加盟店に所属する相続コンサルタントを育成し、並走して実務支援することで全国の相続相談に対応している。 趣味は、家族旅行とフットサル。2007年に自身が発足した岡山県リーグ所属フットサルチームのスポンサーとして支援している。 (成績:県リーグ優勝数回、岡山県選手権予選優勝1回)

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