建築業が相続市場で受注を伸ばす方法
建築業にとって、「相続」は大きなビジネスチャンスです。
ただしそれは、“工事が決まったあと”に呼ばれる存在ではなく、“相続の相談段階”から関わっている場合に限られます。
相続の入口に立てるかどうかで、受注の総量が大きく変わってくるのです。
たとえば、親から相続した築40年の戸建て住宅。
誰も住まないが、売るには古すぎるし、貸すには手直しが必要。
よくあるこのようなケースで、「空き家のまま放置」か「リフォーム・建て替え」かの判断が求められます。
ここで、相続相談にのっていた建築業者がいれば、そのまま次の提案に進むことができます。
また、相続人が複数いる場合、「実家を売却して現金で分ける」いわゆる換価分割になることもあります。
この場合でも、解体工事・測量・境界確認など、建築や土木の領域での仕事が発生します。
相続が発端となって、工事受注に結びつく流れは決して珍しくありません。
さらに近年では、「相続対策としての建築提案」も注目されています。
たとえば、自宅の敷地内に賃貸用の戸建てを新築することで、将来の相続税評価額を圧縮できる場合があります。
「建てることが目的」ではなく、「資産をどう遺すか」を見据えた建築提案は、信頼感にもつながりやすく、価格競争にもなりにくいのが特長です。
介護リフォームなども相続の流れの中で出てくるテーマです。
親が高齢になり、在宅介護を前提としたリフォームが必要になる。
このとき、補助金制度やバリアフリーの知識だけでなく、「将来の相続にも関係する工事である」という視点をもって提案できると、他社との差別化にもなります。
ポイントは、建築業として“相続の話もできる”立場になることです。
もちろん、税務や法務の専門家になる必要はありません。
ただ、「相続が関係していそうだ」と気づいたら、適切な専門家につなげながら、工事や提案に入っていく。
その導線を社内に整えておくだけで、工事の起点になる相談件数が増えていきます。
相続コンサルタントとして活動していると、実際に建築業の方から「紹介が増えた」「価格ではなく信頼で仕事が決まるようになった」という声をよく聞きます。
相談される立場になると、仕事は“受けるもの”から“生み出すもの”に変わります。
【コラム著者のご紹介】

岡山生まれ。26歳で生損保の保険代理店「デザインライフ」を設立し、その後相続に関することで悩み苦しむ人を救うべく2015年から相続コンサルタント事業開始。 現在は、年間約500件の相続相談に対応し、遺言・信託などの法律文書の組成、税申告・登記などの相続手続きをはじめ、保険・不動産・建築など、資産に関わる問題の解決、見直し、活用、運用など、幅広くアドバイスと対策支援を行い、部分的解決ではなく総合的解決へと導く、相続・事業承継に特化したコンサルタントとして活動。年間10億円以上の資産を動かす相続・事業承継対策に携わる。 年間100回程度のセミナー講演を行っており、一般向け相続セミナーのほか、相続コンサルタント養成講座を開講。全国の相続に関わる専門家の教育に携わっている。 この他、日本赤十字社、大和リビング、メットライフ生命、オリックス生命、損保ジャパンひまわり生命等、講演実績多数。実績が評価され2024年には新築戸建賃貸投資に関する全国フランチャイズの研修講師として事業参画。2025年には自身が行う相続コンサル事業をフランチャイズ化。 FC本部として自社だけでなく全国の加盟店に所属する相続コンサルタントを育成し、並走して実務支援することで全国の相続相談に対応している。 趣味は、家族旅行とフットサル。2007年に自身が発足した岡山県リーグ所属フットサルチームのスポンサーとして支援している。 (成績:県リーグ優勝数回、岡山県選手権予選優勝1回)