不動産・保険・建築・士業…各業界の視点で読む、相続のリアルとビジネスの可能性
相続実務コラム

「相続相談」は誰が担うべきか?専門家連携の役割分担

相続に関する相談は、誰に届くかでその後の流れが大きく変わります。
税理士に届けば税務中心に、司法書士であれば登記手続きへ、弁護士であれば紛争の対応へと進みます。
ところが、実際の相談者が最初に抱えるのは、もっと曖昧で感情的な悩みです。
「誰に相談したらいいのか分からない」「何から手をつければいいのか分からない」——それが、現場のリアルです。

この“もやっとした相談”を受け止める役割を担うのが、相続コンサルタントです。
財産の内容を整理し、相続人の構成や関係性を確認し、ご本人やご家族の意向を丁寧に聴き取る。
そのうえで、「どの専門家に、何を相談すべきか」を整理し、連携先にバトンを渡していきます。

この流れをしっかり作っておかないと、相談者は途中で立ち止まり、必要な手続きを後回しにしてしまいます。
たとえば、「まず税理士に相談したけど、誰に何を遺すか決まっていないので進まなかった」という声はよく聞きます。
また、「司法書士に登記の相談をしたら、遺産分割の話は別で進めてくださいと言われた」といったケースもあります。

それぞれの専門家は、それぞれの分野においてプロフェッショナルです。
ただし、最初の相談対応や感情面のフォローまで担うのは難しい。
だからこそ、相続全体を俯瞰してコーディネートする人材が求められています。

専門家連携の理想は、「分担」ではなく「補完」です。
それぞれの専門家が、自分の領域を明確にしたうえで、必要に応じて相手に引き継ぐ仕組みを整える。
相続コンサルタントは、その“橋渡し”の機能を担う立場です。

たとえば、ある程度の資産を持つ高齢のご夫婦から「そろそろ相続の準備をしたい」という相談があったとします。
このとき、いきなり「信託を組みましょう」「遺言を書きましょう」という話に飛びつくのではなく、まずは現在の資産・収支・家族構成・意向を聞く。
そこで見えてきた課題に応じて、税理士・司法書士・保険担当・不動産業者へと、適切にパスを回していくのです。

誰が主導するかではなく、誰が最初に“相談者の全体像”を把握するか。
そこに相続相談の質がかかっています。
相続コンサルタントという役割は、専門家同士の連携を円滑にするハブとなり、結果として各専門家の業務効率と顧客満足度を高めることにつながります。

【コラム著者のご紹介】

岡山生まれ。26歳で生損保の保険代理店「デザインライフ」を設立し、その後相続に関することで悩み苦しむ人を救うべく2015年から相続コンサルタント事業開始。 現在は、年間約500件の相続相談に対応し、遺言・信託などの法律文書の組成、税申告・登記などの相続手続きをはじめ、保険・不動産・建築など、資産に関わる問題の解決、見直し、活用、運用など、幅広くアドバイスと対策支援を行い、部分的解決ではなく総合的解決へと導く、相続・事業承継に特化したコンサルタントとして活動。年間10億円以上の資産を動かす相続・事業承継対策に携わる。 年間100回程度のセミナー講演を行っており、一般向け相続セミナーのほか、相続コンサルタント養成講座を開講。全国の相続に関わる専門家の教育に携わっている。 この他、日本赤十字社、大和リビング、メットライフ生命、オリックス生命、損保ジャパンひまわり生命等、講演実績多数。実績が評価され2024年には新築戸建賃貸投資に関する全国フランチャイズの研修講師として事業参画。2025年には自身が行う相続コンサル事業をフランチャイズ化。 FC本部として自社だけでなく全国の加盟店に所属する相続コンサルタントを育成し、並走して実務支援することで全国の相続相談に対応している。 趣味は、家族旅行とフットサル。2007年に自身が発足した岡山県リーグ所属フットサルチームのスポンサーとして支援している。 (成績:県リーグ優勝数回、岡山県選手権予選優勝1回)

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